Sunday, October 28, 2012

「愛知県東部地方」って,どこのこと?

 昨日(30日)の台風17号の進路が気になって,テレビでその情報を追っていました。最初にテレビをつけたときには,紀伊半島の海岸沿いを移動していて,やがて渥美半島付近に上陸して豊橋市あたりを通過していく見通し,という情報が流れていました。ところが,それからしばらくすると突然,渥美半島も豊橋市の名前も消えてしまい,愛知県東部地方を通過中,という表現に変わってしまいました。それを聞いて,「えっ?愛知県東部地方って,どこのこと?」と首を傾げてしまいました。以後のテレビ報道は,すべて愛知県東部地方で一貫していました。テレビ報道とはNHKのことです。

 愛知県東部地方?愛知県のどのあたりのことを指しているのか,わたしには理解できませんでした。突然,台風が未知の土地に移動してしまったような,そんな狐につままれたような感覚に陥ってしまいました。そしてとうとう,こんな地方があったのか?と自問自答していました。豊橋市で育ったわたしとしては,愛知県東部地方といえば,それはまぎれもなく静岡県です。もう少し狭く考えれば,浜名湖周辺のこと,あるいは,浜松市です。

 わたしの疑問は,なぜ,突然,渥美半島や豊橋市の地名が消えてしまって,東部地方などという言い方をしたのか,ということです。これはNHKの責任ではなくて,たぶん,気象庁がそのように発表したのだと思います。それをそのまま鸚鵡返しのようにして「愛知県東部地方」と報道したのでしょう。しかし,わたしには妙にひっかかるものがあって,なんとも納得がいきません。

 同じ愛知県の名古屋市の人が,「愛知県東部地方」と聞いたとき,どの地方を思い浮かべるのでしょうか。ひょっとしたら,名古屋市からみて「東部地方」と聞けば,長野県か,その隣接地域のことを想像するのではないでしょうか。そして,渥美半島や豊橋市の人間は,自分たちの住んでいる場所を「愛知県南部地方」だと思っているのではないでしょうか。少なくとも,わたしはそう思い込んで,これまで生きてきました。

 どうしても「愛知県東部地方」という地域を特定するとしたら,わたしの場合には豊橋市から飯田市に向かう飯田線で北東に進んだ山の中になってしまいます。ですから,最初に,「台風17号は愛知県東部地方を通過して北東に進んでいます」というニュースを聞いたとき,「えっ? もう,そんなに進んだの?」とびっくりしてしまいました。

 ささいなことと言えばささいなことではあります。が,固有の地名があるのに(それも,懐かしい故郷の地名があるのに),なにゆえに,わざわざ「愛知県東部地方」などという意味不明な抽象化した地名を「創作」し(少なくとも,地元ではこのような言い方はしていません),ひとくくりにしなければならなかったのでしょうか。そこには,なにか他意があったのではないか,という余分な推測をがわたしの脳裏をよぎります。

 なにゆえに,こんなことにこだわるのか。たとえば,「放射性廃棄物」といえばいいものを,わざわざ「指定廃棄物」と言い換える,政府の政治的な深慮遠謀にもとづく「すり替え話法」が,あまりにも無原則に乱用されていると思うからです。とりわけ,地名というものは固有名詞です。人間の姓名と同じです。渥美半島や豊橋市という固有名詞を否定し,わざわざ「愛知県東部地方」などと呼ぶとなると,そこになにか特別の「他意」がはたらいたのではないか,と勘繰りたくなってきます。こういうすり替え話法が,いつのまにか,とんでもなく大きな(それこそ想定外の)結末を迎えることになりかねないと危惧するからです。

 もう一点だけ。こういうものごとを無色透明化させる話法に現代という時代の病根がある・・・とこのところ考えつづけている大きなテーマがあることも付け加えておきたいと思います。このテーマについては,また,別の事例をとりあげながら展開してみたいと思っています。

 今日のところはここまで。

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