Wednesday, October 30, 2013

左右の脚力を補正するための方法について・李自力老師語録・その38。

 今日(30日)は3週間ぶりの稽古でした。一回は台風のため,もう一回は会場の都合で,結局2回つづけてお休みになってしまいました。ですので,久しぶりにみんなで顔を合わせました。そこにひょっこりと,わたしにメールをくださっていたWさんが現れました。お名前は存じあげていましたが,お会いするのは初めて。稽古を見学させてください,と仰る。お話を伺ってみますと,10年ほどの経験があるとのこと。じゃあ,一緒にどうですか,ということになり初参加。

 今日はなんとなく李老師が現れそうな予感がしていました。上手に齢を重ねると,とてもうまい具合に予感が働くようになる,とむかしの人は言ってました。いまのことばで言えば,サクセスフル・エイジングということになりましょうか。わたしもいつのまにかほんの少しだけですが予感が働くようになってきました。まだまだ,確率は低いのですが,おやっ?と思うことが多くなってきました。欲得が徐々に減ってきて,人間的な世俗の欲望からほんのわずかずつとはいえ解放されつつあり,それに比例するようにして自然存在にもどっていくような感じです。自然存在,すなわち動物のような存在。ひょっとしたら,かつての動物性の世界への回帰なのかな,と思ったりしています。ですから,いま感じはじめている予感は,別の言い方をすれば,動物的直観?かな,と思ったりしています。そうか,サクセスフル・エイジングとは動物性の世界に帰っていくということらしい。

 というわけで,わたしの予感は今回に関してはぴたりとあたりました。いつものように,思いおもいに準備運動をし,基本の運動の稽古の途中で,わたしの背後のドアのあたりに尋常ならざる空気が流れました。もう,それだけでわかりました。やっぱり,と。そのとたんに稽古場に緊張が走ります。この感じが,日常の稽古とは違って,またとてもいい具合です。なぜなら,李老師にみられているというだけで,いつもの平常心がくずれて,動作も不思議なほどに狂いはじめます。自分でも信じられないほどのおかしな太極拳をはじめています。そこを見逃すことなくワン・ポイント指摘の李老師の個別指導が入ります。

 基本の動作の稽古が終わったところで,今回は,全体的なワン・ポイントの指導が入りました。今日は,「目線」でした。顔が正面を向いたまま眼線だけ後ろに向けるのではなく,目線の動きに合わせて首・頭も後ろにまわしなさい,と。そうして,悪い見本をもののみごとにみせてくださいます。思わず吹き出してしまうほど上手なので,いつも感心してしまいます。いわゆる「ものまね」です。子ども時代の世阿弥が「ものまね」の名人だったそうですが,その世阿弥の芸を上回るほとのうまさです。李老師の偉さは,その上で,きちんとした動作を垂範してくださるところにあります。すると,もののみごとに,まるで違う世界に誘われるような気持になります。この違いはいったいどういうことなのだろうか,といつも考えてしまいます。たぶん,その格差をとおして,ほんものの姿をしっかりと覚えておきなさい,というメッセージなのだろうとわたしは受け止めています。

 それも,いまの段階では,という断り書きにしておきたいと思います。といいますのは,わたしの眼力がさらに高まってきますと,また違った見方がてきるようになってくるからです。これまでも,そういうことの繰り返しでした。

 さて,今日は,レッスンの途中で,わたしとNさんとの間で,左脚が右脚のようには使えないという話になりました。やはり,右利き,左利きは足にもあって,お互いに右利きの足をしていることがわかりました。だから,左脚を軸にした動作は不得手である,というような二人の会話を聞いていた李老師が,それなら,ということでたとえば,バイフウリャンシーをいつもとは反対のやり方をしてみてはどうですか,ということになりました。

 そして,24式は基本的に右足に体重のかかった動作が多いので,どうしても左脚よりも右脚が強くなっていきます。それはごく当たり前のことです。ですから,それを補正するには,左右反対の動作を基本の運動の稽古のなかに取り入れればいい,と李老師は仰います。

 そうしてこんどは,左右反対の動作を李老師が率先して垂範してくださいます。わたしたちは,そのあとを必死で「ものまね」をするのですが,なかなか思うに任せません。これはひょっとすると,右脚を中心にした太極拳の動作にからだがなじんでしまって,左脚を軸にした動作ができなくなってしまっているということではないか,といささか焦りを感じてしまいます。なぜなら,李老師は左右どちらの動作も自由自在にアレンジしてみせてくれるからです。わたしたちにはそれができません。武術である以上はそれはまずい,と考えてしまいます。

 これはもういっそのこと,24式の動作を左右反対にひっくり返して,最初から逆の動作で始めてみてはどうだろうか,といまになって考えています。左右の脚力のバランスを補正するにはこれが一番ではないか,と。李老師はそこまでは仰いませんでしたが,基本の動作のなかで左右反対の稽古も取り入れるべし,とのことですので,それほど間違ったことではないと思います。

 苦手の左脚を強化するための方法は,もちろん,ほかにもいろいろあるでしょう。それは創意工夫することによって,いくらでもその方法を編み出すことは可能でしょう。そのきっかけを李老師は与えてくださった,という次第です。

 以上,如是我聞。
 
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